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動的平衡

2022.09.06

category_[イメージトレーニング]

今朝台風11号(ヒンナムノー)が九州を通過しました。

夜中にものすごい風が吹いたので、とても怖い思いをされた方が多かったのではないでしょうか?今朝はだいぶ風も落ち着いていたので歩いて通勤しましたが、バイクが横倒しになったり、マンションの頑丈なガラス戸が割れていたりして、だいぶ爪痕が残っていました。

さてその台風通過後の風景を見ながら歩いていて、こんなことを考えました。

台風は一般的に赤道付近で発生して、何日もかけて北上し日本に到達します。だんだん近づいてくる台風の姿はこの写真のようなかたちで見れますので、台風のコースを確認するために、頻繁にチェックすることになります。衛星写真は、わたしたちにとって仕事の予定や防災の準備にとても重要なものになってきました。

そんな台風の衛星写真ですが、形や位置はどんどん変わっても、台風自体が変化して11号が12号に変わったりはしません。昨日の台風と今日の台風は同じ台風と認識されます。

しかしよく考えてみてください。台風を形づくるこの巨大な雲は何からできているかというと、蒸発した海水です。つまり最初に発生した台風は、赤道近くの海の水が蒸発して形づくったわけです。しかし同時に台風はたくさんの雨を降らせます。その雨は赤道近くの水が蒸発してできた雲から降ることになります。すると雲はなくなってしまうはずですが、実は移動した先の南シナ海や東シナ海、太平洋の海の水が蒸発して新しい雲になり、なくなった雲を補います。こうして台風の巨大な雲は維持されます。

さきほどの話に戻りましょう。昨日の台風と今日の台風は同じ台風11号です。しかしそのかたちを作っている雲の成分は昨日は赤道近くの水だったのに(水に意思があったら、自分はインドネシア人だと思っているかもしれません)、今日の台風の成分は沖縄の水に置き換わっています(自分は日本人だと思っているかもしれません)。

台風の見た目は変わっておらず、同じもの(台風)だと認識されているのに、その組成はずいぶん変わってしまっています。こうしてみてくると、台風は“物質”というよりは刻々と変化する“現象”に近い存在だといえます。

人間も同じです。自分はずっとかわらず自分のままだと思っていらっしゃると思いますが、毎日食事をしてたくさんの原子を外界から取り込んで生活していますので、わたしのからだの組成は激しく入れ替わっています。つまり物質面だけからみれば、昨日のわたしと今日のわたしは全く違う物質ということです。しかしそんな認識をする方はおられません。昨日のわたしも今日のわたしも同じわたしと考えるのが普通です。

このようにこの世界に存在するものは、“物質”として変わらないようにみえますので、これらに対して唯物的なとらえ方をついついしてしまいますが、実際は流れる水のように激しく変転する“現象”として存在しているのです。

くわしくは書籍でご覧ください。

量子「人間」学-田中-耕太郎