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音楽療法

2022.11.28

category_[脳科学]

30年近く前、開業する以前に勤務医として勤めていた病院は、精神科病棟を持つ大きな病院でした。

わたしは研修医として働いていましたが、病棟内を歩いていた時不思議な光景を目にしました。

小さなホールの中に入院中の高齢者と思われる人たちが集まり、何かをしています。近くにいたドクターに何をしているのか尋ねると、「あの有名な田中多門先生が音楽療法をされているんだ」という話でした。

田中多門先生は老年医学の草分けとも言える存在で、特に晩年は、ご自身が開発された音楽療法に心血を注がれていました。わたしが目撃したのは、まさしくその場面だったのです。

音楽には医学的な効果があるとして、この治療法を保険診療に加えるという話も出ていたそうです。日野原重明先生もその活動を絶賛されていたそうでした。

音楽には感情を揺さぶったり、落ち着かせたりするさまざまな効果があります。特に高齢者は理性的な知能よりも感情的な知能の方が優勢になっていますから、感情に働きかける音楽というものは医学的にもっと注目されてもいいのかもしれません。

もうすぐ認知症に関する書籍を出版する予定ですが、執筆する中でふとこのエピソードを思い出しました。