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量子力学で生死を考える

2023.01.30

category_[生と死]

わたしたちの肉体も含め、この世界のあらゆる物質は、細かく分割していくとこれ以上は分割できない単位として原子に行き当たり、物質はすべて原子が集まってできていることがわかっています。しかし原子を構成する素粒子は量子と呼ばれる「粒子」であると同時に「波」でもある量子であることもわかっていて、物質はどんなに硬く見える物でもすべて波の性質をもつ存在であるという結論になってしまいました。

そのため、わたしたちの日常感覚でとらえられる波(水面の波や音波や電波)の性質を感覚的に目に見える物質に当てはめることがなかなかできず、量子力学という分野は間違いのない科学的な理論であるにもかかわらず、わたしたちとは縁遠い存在になってしまい、一部の科学者の遊び道具のようなものになってしまっていました。

しかし、近年、量子コンピューターなど量子技術というものが開発され、知らないうちに身近になってきたことから、量子力学に注目が集まるようになっています。

今までの量子力学に関する書籍は、科学者が一般の方に理論を紹介するものであることが多かったのですが、ニュートン力学の発想からなかなか抜け出られない一般の方には感覚的に理解しにくい内容であるために、読むことで「勉強した気分になれる」内容にとどまっていました。

しかし、何度も何度も勉強するうちに、また身近にその存在を実感するようになってきたために、人々は理論の紹介を受けるだけでは満足できなくなっているのだと思います。この理論は結局わたしたちにとって“どのような意味を持つのか?”、このように感じ、考える方が増えているのではないでしょうか?

田坂さんが「死は存在しない」で、紹介しているように、この量子力学の理論は生死の問題を考えるのにとても相性のよい理論です。

“死”を知るためには、死んでいく“わたし”とは何かを知らなければならず、“わたし”を知るためにはわたしの意識や思いを規定する“こころ”を知らなければなりませんが、“こころ”というものは物質でないために今まで科学的には手の出せない分野だと思われていました。からだという物質でできていると思っていた“わたし”が、物質であると同時に物質ではない波というエネルギーでもあるというのですから、“こころ”についても科学的にとらえることができるようになり、ひいては非科学的と無視されてきた部分にも日の光があたるようになるのだと思います。

波は一定のリズムで繰り返すゆらぎが連続したものです。リズムを決めるのは“波長”と“時間”で、エネルギーを決めるのは“振幅”です。同じエネルギーの波でも波を伝える媒質(水や空気)が変われば伝わる速度や向きが変わります。

田坂さんは湖面をわたる風をたとえに出し、空気の中を伝わって来た波が水に伝わっていく姿を示しました。2種類の違う媒質を同じ波が伝わっていけるのですが、媒質が変わることで伝わり方が変わることを、比喩で表現されたのです。この2種類の違う媒質のたとえは、物質世界とそうでない世界が接していることを暗に示し、その関係性を示しています。この二つの世界は水と空気のように物理的に分かれていなくてもいいです、重なり合っていてもいいのです。