今朝の読売新聞のコラムで、ロシア語通訳者の米原万里さんのエッセーが紹介されていました。
「望郷指数」
というのは米原さんの造語です。
米原さんがプラハの「ソビエト学校」に通っていた頃、その学校には外国の子どもばかりが通っていたのですが、それぞれの出身の異なる級友と触れ合った記憶から、上記の言葉を思いついたんだそうです。(『真昼の星空』中公文庫)
「望郷」という文系の単語と「指数」という理系の単語が組み合わさっていて、とてもおもしろいと感じました。
・ 故国への愛着は離れている時間と距離に比例する
・ 大国より小国、強い国より弱い国、故国が不幸なほど指数は高くなる
人の心情を説明する言葉なのに、「比例する」や「指数は高くなる」など、理系の公式のような解説が加えられています。当然、計算も測定もできないことだとわかってはいるのですが、なぜかそのことばの意味はよく理解できます。
一般的に愛情や感情など人の心情を表現するのに、強弱など物理法則の単語が使用されます。
たとえそれらが測定したり、計算したりできる科学的な存在ではないと理性では思っていても、人は共通認識としてそれらの存在を確信し、強弱など科学的な表現を用いて説明しようとします。
きっと人の心情を深く解き明かしていけば、それらを説明できるなんらかの法則が働いている、ということなのかもしれません。