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苦海

2022.07.15

category_[価値について]

R・タゴールの詩を紹介します。

 

「囚人よ、いったい、誰が お前を縛ったのか。」

「わたしのご主人です」と、囚人は言った ー 「わたしは 富と権力さえあれば、世界中のだれにもまさることができると思っていました。それで、王に帰すべき金銭を自分の宝庫に貯えました。眠りにおそわれると、わたしは 主のためにしつらえた寝床に 身を横たえました。こんど、目を覚ましてみると、わたしは 自分の宝庫の囚われ人になっていたのです。」

「囚人よ、いったい、誰がこの頑丈な鎖をこしらえたのか。」

「この鎖を念入りに鍛えあげたのは わたしでした」と、囚人は答えた ー 「わたしの無敵の権力で 世界を虜にして、自分だけは だれにも束縛されずに 自由の身でいられるものと思っていました。そこで、夜も昼も休まず、火をおこし 鉄を鍛え、容赦なく槌をふるって 鎖作りにはげみました。ようやく 仕事が終わって、鎖の環が完全で頑丈に仕上がったとき、気がついてみると、鎖に繋がれていたのは わたし自身でした。」

(ギタンジャリ R・タゴール 森本達雄訳註)

比喩的な表現なのでわかりにくいですが、人生について書いている詩です。誰しも必死にまじめにこの「苦海」とも表現される人生を生きています。しかし、自分なりに一生懸命生きたとしても、その人生はとらわれ続ける囚人の生活のようなものであることを表現しています。

どうすれば自由になれるのか、そのヒントがこの詩には隠されていると思います。