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仏基一元

2022.08.26

category_[仏教]

今回も高野山で仕入れた仏教のお話です。

高野山奥の院の入り口には不思議な石碑があります。景教碑と呼ばれるものです。

この石碑は中国西安にある碑林博物館所蔵の「大秦景教流行中国碑」の模造碑として明治44年(1911年)に建立されました。

建立した方はイギリスの比較宗教学者エリザベス・アンナ・ゴードン夫人です。

ゴードン夫人は1851年イングランドに生まれ、ヴィクトリア女王の女官を務めた貴族でした。オックスフォード大学で比較宗教学を学び、日本人留学生との交流をきっかけに日本で研究を行うようになりました。研究テーマはキリスト教と仏教はもともと同根であるという仏基一元説です。

高野山の宗祖空海が入唐した当時、都長安にはイラン、インド、ソグドや遠くヨーロッパの人が訪れ、宗教への寛容な雰囲気の中で多くの交流が行われていました。長安の大秦寺にネストリウス派キリスト教(景教)が流行していたことを記念し、781年石碑が建立されたのです。

空海の思想の中にはこのキリスト教も含まれているいうのがゴードン夫人の言いたかったことなのでしょう。

確かに真言密教の教えはお釈迦様ではなく大日如来を中心に説かれています。大日如来が聖書の神と同一だと考えれば、一元と考えることができるのかもしれません。もともと宗教というものが天地の理(ことわり)を説明するものであるとするなら、それらの思想の根源にさかのぼれば境界はないはずです。すべての宗教の本質は一つであるはずだとわたしは思います。

この景教碑の右隣にはゴードン夫人のお墓が並んでいます。大正14年(1925年)京都のホテルで死去したゴードン夫人はその遺志を尊重して奥の院に埋葬されました。お墓の正面には「英国イエ(EA)ゴードン夫人之墓」側面には「密厳院自覚妙理大姉」と刻まれています。