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量子力学的な思考法

2022.08.29

category_[量子力学]

最近、読んだ文章がまったく異なった分野の説明をしているのに、とても似たことを言っていることに気づきました。

20世紀型思考では、問題が起こっても最善な解が存在すると考えられていました。多くの問題はすぐに一つの正解が分かる単純な問題であり、複雑な問題も時間をかければ正解にたどり着けるという安心感がありました。しかし21世紀に進行する多様化は、価値観のゆらぎを意味するので、正解があるのかないのかわからないやっかいな問題が増えてきます。こういう問題に対してパターン化された思考は解を見つけられません。様々な出来事、情報を複眼的に把握し思考することが求められます。

(EQトレーニング 高山直)

この文章はいわゆるビジネス書の文章です。現代のわたしたちが突き当たる問題に対して、今までと異なるアプローチをしはじめていることを説明しています。そこにEQが必要だという話がこのあと展開されます。

次は科学書です。

最近まで、クロロフィル分子どうしでのこのエネルギーのジャンプは行き当たりばったりに進められ、ランダムウォークと呼ばれる、探索戦略のなかでもいわば最後の手段が基本的に使われていると考えられていた。ランダムウォークは「酔歩」とも呼ばれる。酔っぱらった人がバーから出てあちこちへさまよっていると、やがて家にたどり着くという様子に似ているためだ。しかしランダムウォークは、どこかへたどり着くための手段としてはあまり効率的ではない。・・・しかしこの光合成の第一段階はとてつもなく効率が高いことが知られているため、そのようなモデルはあまり理屈に合っていなかった。・・・この「量子のうなり」の発見によって、励起子はクロロフィルの迷路の中で一つのルートをたどっているのではなく、同時に複数のルートを進んでいることが明らかとなった。

(量子力学で生命の謎を解く ジム・アル・カリーリ ジョンジョー・マクファーデン)

この文章は植物の葉っぱの中で行われている光合成を例にとり、ありふれた生命現象を細かくみていくと、量子力学的な手法が用いられていることを説明しています。つまり生命の営みに必要な化学反応はわたしたちが今まで考えていた以上にずっと効率的に行われていて、バカ正直に迷路の中の一本道をさがすのではなく、量子力学的に迷路の全てのルートを一気に探索していることが説明されています。

科学的な現象は時代に合わせて変わってきたものではありません。生命が生まれてからずっと存在する仕組みですが、わたしたちが科学的な手法をつかってその本質に徐々に迫っていき、新しい姿が明らかになってきたものです。ひるがえって社会的な思考法はわたしたち人類が長い年月をかけて変化させながら最適なものを探し続けています。

それらが偶然同じように量子力学的な話をしているので、その偶然性に感動しました。