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一年草

2023.05.08

category_[生と死]

生物の持つ不思議な仕組みの一つに、アポトーシスという機能があります。

アポトーシスは細胞に自死を誘導する仕組みで、生命の維持にはとても重要です。たとえばカエルは成長の途中で変態を行い、尻尾をなくしてしまいますが、この尻尾をなくしてしまうときにアポトーシスの仕組みが働くことが知られています。

このアポトーシス以外にも生物は、細胞に寿命を与えるテロメアという遺伝子の仕組みだったり、骨を壊し続ける破骨細胞だったり、自分のからだを構成する細胞を破壊する仕組みを持っています。

なぜこのような仕組みが必要なのでしょうか?

受精卵は細胞分裂しながら細胞の数を増やして増殖していき個体が発生しますし、子供はどんどん成長して大きくなります。そのような姿を見ているせいか、ついつい細胞が増えていく方向にばかり目が向いてしまいますが、同じ形にからだを維持するためには、古い細胞を壊して新しい細胞に働き場所を与える仕組みが同時に必要なのです。

そのように考えていくと、一年ごとに成長し、実をつけ、そして枯れてしまいますが、また翌年の同じ時期に同じ成長の姿を見せてくれる一年草は成長と老化と死という生物の自然な姿を見せてくれる存在だということに気づきました。一年草が枯れる時も当然、細胞死の仕組みが使われています。

一年草は毎年違う個体を発生させているようですが、この写真のように全体としてみると毎年同じ姿でいるともいえるのです。つまり毎年死を迎えながらも、生物としては永遠に同じ姿を保っていると見ることもできるのです。一つの個体を永遠に維持しなくても、ゾンビのように一度死んだ個体を動かさなくても、生物は新陳代謝を繰り返すことで永遠に生きていけるということなのです。

これがエントロピー増大の法則に従う世界の中で、唯一ばらばらになっていかない生物という特殊な存在が、永遠に存在する仕組みに違いありません。

人間も同じです。一人一人の人生だけをみれば、はかなく死んでしまうようですが、生物としてからだを新陳代謝させながら、ずっと生きていると見ることができるのです。