産業革命は18世紀末にイギリスで始まったことは皆さんご存知だと思いますが、実際に何が起きたか具体的に覚えておられる方はあまりおられないのではないでしょうか。
まず何年に起きたかという年代が特定できません。なぜなら、何年何月何日に起きたという事件が決まっていないのです。それまでの歴史においても、「紙」や「印刷技術」、「羅針盤」の発明など人間生活に大きな変化を与えた事件は存在しましたが、あえて革命とは言われていません。
近代物理学を確立したといえるニュートンは1600年代に活躍しましたし、進化論の元になり人類思想に大きな影響を与えたダーウィンの「種の起源」は1800年代の半ばに出版されています。ですから、これらの動きとは少し時期がずれているのです。
蒸気機関や綿織物に関する各種の技術革新を起点にして、多くの作業が工場内で機械的に行われるようになっていった現象です。
たくさんの技術革新が一人に人間の力によらず、同時多発的に多数生じ、またそれらが影響し合って飛躍的に日常生活に関わるあらゆる分野に影響を及ぼしました。
産業革命という現象を分析するとにはいろんな見方ができると思いますが、私はこの同時多発的という部分が重要だと思っています。つまり、たくさんの人が自由に知識と技術を取得できるようになったことが、たくさんの発明と革新を広範囲に引き起こしたと私はみます。
新たな技術は、どこでも誰が使っても同じ結果を出せなければ、一瞬で信用を失います。ですから、科学的な新しい発見については、その研究方法に共通のルールが必要になり、整備されました。そしてオープンな形で自由に使用できるようにされたのです。
このようにして、世界中の人類が信用できる「科学的な手法」が確立し、この世に出現しました。
このような変化が人類の中に起こり始めたのが「産業革命」という現象だったのではないでしょうか?
しかし、「科学的な手法」に対する信頼があまりにも大きかったために、人類はその手法にのみ依存するようになり、学歴社会による社会の分断や環境問題など弊害にも苦しむようになってしまいました。
そのような意味で、新たな革命が必要と思いますが、産業革命のような現象が再び起きるためには、同じような社会的基盤が必要です。どんな人類でもオープンに使用でき、同時多発的に新たな工夫を発表できるような雰囲気は現在あるでしょうか?
ネット社会という基盤ができたことで、国境や人種を超えて新たな革命が起きる基盤ができているようにも見えます。これから新たな動きが出始めるのかもしれません。
いろんな分野にアンテナを張って世の中の動きに注意してみていきましょう。