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世論調査と深層心理

2023.04.07

category_[心理学]

さて今回はいつもと趣の違う話題について書いてみます。

エマニュエル・トッドの著書「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」から引用します。

異人種間結婚について、米国人の43%がそれを良いものと見做し、44%がそれを同人種間結婚とまったく同等に受け容れると言い、それを悪いものだと思う旨を回答したのは、僅かに11%だった。

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しかし、社会生活の現実は、このような解放主義的なオピニオンをまったくもって反映していない。

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最近結婚した人口のうちの混合結婚率を見ると、アジア系とヒスパニック系ではおよそ25%であるのに対し、黒人においては17%にとどまっている。いずれにせよ、米国黒人の混合結婚状況に典型的なのは、女性が除外されていることだ。最近結婚した黒人男性の24%は、自分と同じ人種カテゴリーには属さない相手と結婚したが、その率が黒人女性では9%でしかない。

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2008年に、未婚の母の誕生の割合が黒人女性では71.8%に達していた

 

エマニュエル・トッドはフランスの著明な人口統計学者で、人口動態に関する統計を巧みに読み解き社会の実相を解き明かし、将来を予測することで知られています。

アメリカ社会の実相を解き明かす文章の中で、特に黒人に対する差別(レイシズム)について統計を用いて論じている文章の一部ですが、わたしが注目したのは、世論調査の数値と人種や性別を区分して統計処理をして得られた実際の数値の違いです。

よく新聞などで世論調査の数値を用いての議論をよく見かけますが、人間には本音と建て前があることを考えると、「こうあるべき」と頭で考えて答える世論調査と、実際に「そうなっている」かを調べる実地調査の数値はかけ離れる場合があるということがあるので注意が必要なのです。

差別など人の深層心理が影響するような項目には特に注意が必要です。

人間には表面意識の奥深くに深層意識があります。ネットや報道などの言説に影響され表面的に理解している事柄でも、自分の深層意識に反している場合があり得ます。自分が正しいと思い込んでいることであっても、深く考え自分の深層意識と合致しているか確認する生活をしなければ、こころが無理を続け壊れてしまう可能性があります。

このようなことが統計で明らかにできるんだなと感心しました。